恩師に会いに行く(2):小学校の恩師に彷徨っている私の人生に助言をいただく
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3月末。
2月に「F80号に絵を描こう」と決めて1ヶ月があっという間に経った。
私はまだまだ人生に迷っていて、キャンバスは白いままだった。
描きたいものがわからない。
描いてどうするのだ、考えても無駄だとわかる愚問が私を追ってくる。
私の小学校の担任の先生は、先生をやめて、書道家になっていらっしゃる。
私はいつだか先生に書道を始めるきっかけを聞いたことがある。
「それは、あの時の担任していた時に、学級のお便りを保護者向けに書いたじゃない?あれを筆ペンで書いたのがきっかけだよ。」
私が所属していたクラスは荒れていて、誰も担任をやりたがらなかった。新しく赴任したI先生が担任になった。
先生は荒れた小学6年生のクラスを見事に立て直して下さった。
先生の作品は、私のテリトリーの商店街のお店でも見かけたことがあった。
テレビのCMのバックに掲げられていたこともあったようだ。
先生はどんな形で信用を得て、書道家という仕事に就いたのか、お話を聞いた。
「毎年、同じギャラリーで個展をやる。そうすると「この人はそれなりに作品も人気があって毎年ここで展示ができる人なんだ」と認知される。」
先生が毎年個展をなさっていたギャラリーは今はもうないが、街の有名な商店街にあり、借りるのはお高い場所だ。(私だったら、その賃料で1ヶ月は暮らせる。)
「若い人は何か賞をとって、それを肩書きにできるけど、もう年だからね。僕にはそれができない」とおっしゃっていた。
私は今、日本画に興味を持っていることを伝えると、「これ、あげるよ」と言って、墨と硯を下さった。
そして、アトリエに展示してある先生の作品について教えて下さった。
「これは最初に書いた作品ばかり。あえて、そうしている。その頃のこと忘れないように。」
きっと初心を忘れないように、ということだろう。
大きな絵を描く時、仕上がるまでに時間がかかるので、最初に感じた対象物への自身の気持ち、その時の対象物のきらめきを最後まで自分の中に持ち続けて描くのが非常に難しくなる。初めて描いたF 50号の絵などは、途中でその気持ちを無理に思い出そうとして辛くなり、泣きながら描いた時もあった。
それを思い出した。
私も最初に描いた絵を飾っておこうか、そう思った。
「描きたいものを描いたらいいよ。賞とか、そういうの関係なく。今、描く時間があるなら、それは貴重な事だよ。」
先生は、昔から否定せず肯定してくださっていた。
そして、先生が書き続けている動機を聞いて、私は泣きそうになった。
「僕は、子供たちのために書いている。子供たちに伝えたいことがまだあるから。」
先生がまっすぐ遠くを見つめてそう言った。
そういう芯があるというのは、きっと誰かに伝わる。
私もそんなふうに誰かのために描きたい。
私は、一人のファンのために個展をやりたいと思っている。
それは本当に最初で最後になるかもしれない。(幻の個展を除いては。)
身丈にあった場所で、身丈にあった個展をやろうと思う。
今の私は、それが目標で、目の前にある大きなキャンバスの空間を私の世界で埋めていくいかない。
先生に会えてよかった。
ずっとお会いしていなかったので、快諾して、私と会ってくださった。
ありがとうございました。
とにかく、今は、私は絵を描きます。
先生の作品は、先生が住んでいらっしゃる界隈のお店に点々と飾っていただいているとのこと。8店舗ほど。
「美味しくて、お店の方の人柄が良い、作品をおきたいと思うお店」
そんなお店を見つけると、先生自らが通って、顔馴染みになって、それから作品を贈り、そこに飾っていただくそうだ。
「日本人がルーブルに美術品を見に行く様に、フランス人がここに作品を見にツアーを組んで来て欲しいねぇ!」と笑って言っていらした。
私は、先生の作品たちがおいてある店を記載した地図を作りたいと思った。
自分の大きな作品が落ち着いたら、先生の作品がある店店の地図を作りたい。
それを今は楽しみにしている。
先生とその日、夕飯を食べた。
先生が連れて行ってくださったお店にはやはり、先生の作品があった。
金子みすずさんの詩が書かれていた。
みんな違ってみんないい。
真ん中に「響」という文字が大きく書かれていた。
その詩が訪れるお客様達に「響いて欲しい」という気持ちを表現したのだそうだ。
文字というのは、その人が見える。
先生があの「響」という文字をどんな気持ちで書いたのかは、その線の表現でわかる。
音という漢字の下の棒が横にまっすぐ、伝わっていく様な線だった。
私も、一本の線が見つかるといいな。
その作品作品で「これだ」と思う一本の線が。
とにかく
とにかく
私は今を大事に描くしかないのだ。
先生!また一緒にご飯にお付き合いください!
そして、地図、私は本気で作りたいと思っている。
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